地平線への鍵 【Sound Horizon考察】

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「Yield」 -「3-1+1-2」という数式について-

 この数式を考えるに当たって肝要となるのは、歌詞の中のたった一文を、正確に理解するだけではないでしょうか。
 曰く、「問題となるのは個の性質ではなく、ただ記号としての数量」という点です。
 この一文は即ち、数学の根本的な前提に他ならず、私達の誰もが必ず教わった事柄です。

「りんごが1つ、みかんが1つ有ります。足すといくつになりますか?」
 この問題の答えを、あなたは何と答えますか? 当然、「2つ」ですよね。
 そうやって何の疑問もなく「2」という答えを出せてしまうのが、その確たる証明です。

 ですが、あなたは本当に、初めからそれを当たり前だと考えていたでしょうか。
「りんごとみかんは違うから、足せないよ?」
 例えあなたに憶えが無かろうと、そんな疑問をぶつけて親や学校の先生を困らせる子供は、常に存在します。
 そんな子供たちが最初に教え込まれるのが、
「この場合、りんごである事と、みかんである事に、意味はないんだよ。だから1個と1個を足すと、2個になるんだ」
という、「1」という数字の定義(性質)に対する疑念の放棄です。
 そう、まさしく「問題となるのは個の性質ではなく〜」という、歌詞中の一文そのままの事なんですね。
 そんな“当たり前”のことに敢えて言及している意味を酌んだならば、もう結論は出たも同じです。

 冒頭の「一人娘」というのが、「一人っ子」なのか、「一人の娘」なのか。
 「娘」が横恋慕している男女が、良く言われているような「実の父母」なのか、それとも「他人」なのか。
 この数式を考えるに当たり、それらは全て意味が有りません。メタ存在たる「仮面の男」も、ここでは単なる「1」に過ぎませんし、歌詞から窺える「娘」が妊娠しているというニュアンスに受け取れる点も、やはり同様に「1」でしかありません。

 そして、これは同時に、推論の棄却が絶対条件であることを意味します。
 何故なら、「1」という数字に類推を差し挟む数式など、そもそも成立すらしないのですから。
 ならば、“曲中に提示された情報”が全てです。それさえ踏まえれば、後は“推測を紛れ込ませず”に一つ一つを潰していくだけで、「3-1+1-2」の内訳は明快となります。

 最初の「3」は、説明するまでもなく「娘」と「一組の男女」の、女性二名、男性一名です。
 「不安定な数字」という表現も、彼女らの関係性の危うさを言外に示唆していますよね。

 続く「マイナス1」ですが、これははっきりとは判りません。
 「もぎ獲れないのなら〜」という部分の物言いから、「娘」が己のものにしたかった対象を強引に手に入れようと心に決めた事が伺えますが、これだけではその対象が男個人という「存在」なのか、男と自分が恋人となるという「関係」なのかはハッキリせず、故に男と女のどちらを殺害したのかという答えを導き出すにも不充分です。
 他の部分からも確たる根拠となる情報は得られませんので、首を刈り獲る=男女のいずれかを殺害するという事実(結果)のみが窺い知れるに留まりますが、「個の性質」を追求する意味はないのですから、それだけ確認できれば問題はありません。

 「プラス1」に関しては、これは明白です。
 曲中にて、加えられる(現れる)という表現が用いられているのは、唯一「仮面の男」だけだからです。
 前述の通り、彼が人間ではないという点は、この数式に於いて一切関与しません。

 ならば、最後の「マイナス2」についても、敢えて書き記すまでもないでしょう。
 曲の締め括りにて述べられる「彼ら」の「彼」は、「仮面の男」以外に有り得ませんし、だとすれば彼が連れ去ったのは、「Abyssサイド」の他曲を鑑みて「娘」自身に他なりません。

 「荒野に一人取り残されるのは誰」という問い掛けには対しては、「マイナス1」の部分が判然としない為、明確な答えは得られません。
 数式の答えとして考えれば「1人」という解答が得られている為、別に問題は一切ない。ここまでが、考察という行為の限界でしょう。

 ジャケットイラストに描かれている首を失った二人の人影と、曲中から得られる情報との相違。それに付随する数式の解釈の見直しなどは、私は一切行いません。何故なら、それは“類推”や“推論”の領域であるからです。
 そして、その類推や推論に対して、私には辻褄の合う根拠を見出す事が出来ませんでした。
 確たる論拠に因らぬのであれば、それは既に考察に非ず、ただの妄想に過ぎませんからね……。
Copyrights (C) CAZ 【2005年08月02日更新】 | Elysion 〜楽園幻想物語組曲〜 | HOME
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