皆さんは、もし「エリュシオン(アビス)ってそもそもどういうものなの?」と問われた時、果たして答えることが出来るでしょうか?
どうも我々日本人というのは、アルファベットと見ると脊髄反射で英語だと思い込む傾向にあるらしく、「Elysion」を英語だと思っている人さえ居たという話も……。
そういう訳で、ここでは元来の「Elysion」と「Abyss」というものについて、少々説明してみようかと思います。
さて、まずは楽園でありますところの「エリュシオン/Elysion」。
これはギリシア神話に於きます“神々の祝福を受けた死者のみ”が集う地であり、「救済や平穏の得られる地」や「苦しみから開放される楽土」というのとは、少々趣が異なります。
性質的に言えば北欧神話にあります、戦乙女ヴァルキュリアに導かれた戦士達の魂が集うとされる、主神オーディンの住まう「ヴァルハラ宮殿」に近い存在でしょう。
余談ですがギリシア神話には、「エリス/Eris」という名の争いの女神が居たりします。
この女神は多くの子を成しているのですが、その中には“迷妄と破滅”(!)の女神「アテ/Ate」なんていう神様が居たりと、何やらエリ組の内容にも通じるものが…。
そしてもう一方の「アビス/Abyss」。
実はこれ、「Elysion」と同じギリシア語起源の言葉ではあるのですが、神話を出典とする単語ではないんですね。同神話に於ける冥府(地獄)の名は、そこを治める神の名と同一の「ハデス/Hades」ですし。
ギリシア語としての本来の意味は「底無し」。英語としては皆さんご存じのように、奈落、深淵、深海、地獄などの意です。
フリードリヒ・ニーチェの「善悪の彼岸」に於ける「And if you gaze for long into an abyss, the abyss gazes also into you...(深淵を覗き込むとき、深淵もまたこちらを覗いているのだ…)」なんかが有名ですね。
と、ここまで解説した上で初めて言及できるのですが、実はこの「Elysion」と「Abyss」には、大きな関連性が有るのです。
それは「Elysion」が存在するとされる、“場所”についてです。
これは実に面白い感覚なのですが、楽園たる「Elysion」が有る場所とされたのは、「タルタロス/Tartaros」の中心。
この「Tartaros」は冥府たる「Hades」の更に底、地底の最底にある無限の暗闇を指し、「奈落」と訳されることも。
神々(特に主神ゼウス)に背いた大罪者が落ちる場所とされ、地獄と同一視されることもある地の名前なんですね。
なので、「Tartaros」=「Abyss」という解釈は可能な訳なのですよ。
ちなみに同名の神様も居ますが、これは神話では余りポピュラーな存在ではないようです。
とどのつまり、こと地理的な意味合いに於いては、「Elysion」と「Abyss」は同一であるという解釈が成り立つ訳なんです。
互いが互いを内包し合う、とでも言いましょうか、ともかく分かち難い存在である訳なのです。
ここら辺りが、エリ組で両者を表裏一体として描いている根拠になっているのでしょうね。
地平線への鍵 【Sound Horizon考察】
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