地平線への鍵 【Sound Horizon考察】

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「檻の中の花」 -ノエル・マールブランシェとは何者なのか?-

 「檻の中の花」の歌詞に目を通した方であれば、誰しも疑問に思ったのではないでしょうか。
 この話の著者として末尾に記されている、「Noel Malebranche(ノエル・マールブランシェ)」というのは誰なのだろうかと。
 ここでは、その謎を解き明かすべく、檻の中の花(以下、檻花)に登場する人物名の意味などを用い、一つの推論を展開してみようと思います。


 さて、これは皆さんもご承知とは思いますが、「Noel/ノエル」(正しくはNOёL)はフランス語で「Christmas/クリスマス」を指す言葉です。
 ラテン語の「Natalis」から派生した言葉で、意味は「誕生(日)」。イエス・キリストの誕生日なので「Noel」という、実に単純な命名です。
 檻花に登場する人物名は、「Armand/アルマン(軍人) Olivier/オリヴィエ(オリーブ)」を除き、「Joseph/ジョセフ (神よ増やし給え)」「Michel/ミシェル (神に似たるものは誰か)」「Malebranche/マールブランシェ(男性+枝)」姓の登場人物は全て、宗教色の強い名前で統一されています。
 もっとも、ここで本当に注意すべき点は、「Michel/ミシェル」が本来は男性名である事(英語読みだと「マイケル」です)と、彼女の姓「Malebranche/マールブランシェ」が持つ意味との、奇妙な符合と関連性でしょう。
 そして、彼女が「少年(ギャルソン)の液体(サン)」を必要としているという、なにやら吸血鬼めいた描写がされている点。
 これらを全て結びつけると、まるで彼女は「男になりたい」という異性への変身願望を持って行動しているように、思えては来ませんでしょうか?
 そうやって考えてみますと、実は「檻(カージュ)」とは「性別」を指しているのではないかという推測が成り立ちます。
 突飛に思えるかも知れませんが、クリストフ・ジャン=ジャック・サン=ローランの分析に当て嵌めてみても、矛盾を感じるどころか納得できてしまいませんか?

 「Malebranche/マールブランシェ」家の血筋が、本当に吸血鬼めいた能力を持つ存在の血統であるかはともかく、名前からして男系の家系であった可能性は高いと思われ、それはつまり、女であるミシェルがイレギュラー的な存在であったとの見方にも繋がります。
 本来ならば望まれていたのは男児であり、故にミシェルという名を与えられた彼女は、ひょっとしたら幼少期を「男の子」として育てられていたのかもしれません。ですが、いわゆる二次性徴にでも差し掛かれば、彼女は否応なしに自分が「女」である事を理解せざるを得なくなります。
 そして身体の生育は、得てして精神の成熟にも寄与します。恋の一つでもすれば、彼女は悩む事となったでしょう。確かに「女」である自分と、「男」でありたいと思う自分との、逃れ得ぬ二律背反によって。
 その上で檻花の歌詞の内容を振り返れば、彼女が当初選択したのは、「女」としての自分だった可能性が高いでしょう(二度目の舞台)。
 しかし、愛した人を失う形となった彼女は、それを諦め欲求を移行させる。少年達を贄として、自らを「男」へと変えるべく(三度目の舞台)。
 では、13人(忌数)の少年を犠牲とし、彼女は何を成し得たのか。それを考える上でヒントになりそうなのが、「ノエル・マールブランシェ」の存在なのです。

 以上を全て踏まえた結果、私はこういう結論に至りました。「ノエル・マールブランシェ」とは、「ミシェル」の生まれ変わりに近似する存在なのではないかと
 恐らく彼女は、「男」としての生を手に入れたのです。そして、「誕生」という名を名乗ることによって生まれ変わったことを自認し、新たな人生を歩んだのでしょう。
 その方法? クリストフ同様、それは私の識り及ぶところではありませんとも。
 年齢的には決して老婆と形容されるような人間ではなかった筈のミシェルが、なぜ干からびたような姿で発見されたのか。これは、その死体が彼女の「抜け殻」だったからではないでしょうか。
 そう、彼女は「女の躯」という「檻」から抜け出したのです。少年達はその為に必要な、新たな肉体の「素材」の様なものだったのではないでしょうか。
 13人の少年の躯から良質な部位を奪うなどして、それを用い一個の肉体を生成。その上で精神と記憶を乗り移らせ、全く別の人間として新たに“誕生”する(生まれ変わる)。そして彼女は、以後を「ノエル」(人名に用いられる場合、これも男性名です)という人間として生きた。
 そうやって彼女は、偏執的なまでの異性への変身願望を達成したのではないでしょうか。

 え? それじゃあ、クリストフが言っている「彼女の願望は生涯叶うことは無かった」という言葉と、矛盾しますか? 私は別に、おかしいとは思いませんけど。
 人間社会の犯罪史に刻まれた「ミシェル・マールブランシェ」は、歴史が続く限り永劫に、「女性」として認識され続けてゆくのですから…。
Copyrights (C) CAZ 【2005年07月13日更新】 | Elysion 〜楽園への前奏曲〜 | HOME
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