地平線への鍵 【Sound Horizon考察】

HOME > Chronicle 2nd > 「聖戦と死神」のバックコーラス

「聖戦と死神」のバックコーラス

 歌詞カードには記載されていない部分が多いのも、SH作品の一つの特徴です。
 正答がないだけに各所で様々な説が飛び交い、その中でも一際漠然としていたものの一端が、この「聖戦と死神」のバックコーラスではないでしょうか。
 「くろの ふぃーねす ふぃーでぃす ふぇーろっさ」という風に聴こえる、あれです。
 実のところ、私がこうしたサイトを作成する事になった契機となったのは、某所にて、これについて一つの説を提唱したことにありました。
 [Chrono Venies! Vidies! Velesa!]というのがそうなのですが、これについてはクロニカ学習帳さんなどにも転載されましたので、既に目にした方も居らっしゃるかもしれません。
 ここでは、この答えに至るまでの経緯を述べると共に、「聖戦と死神」世界で使用されている言語について考えていきたいと思います。


 さて、「聖戦と死神」のバックコーラスであるこれを、皆さんは最めて聴いた時、どこの言葉だと思いましたでしょうか。
 私は本当に最初は、単純に英語なのかと思ったのですが、それにしては語感に微妙な違和感が……。
 そこで、よくよく考えてみますと、ヨーロッパ西部がガリアと呼ばれていた時代なら、英語などそもそも存在しなかった頃である可能性が非常に高い。だいたい「共和制ローマ」乃至「ローマ帝国」の隆盛期ですから、公用語といえばラテン語です。
 そうやって思考を切り替えてみると、このコーラスの冒頭部分はあっさり[Chrono](ギリシア語起源のラテン語で、時間の意。ギリシア神話のクロノスという時の神の名が語源)だろうというのは判りました。
 ところが、その後がさっぱりわからない……。

 但し、似たような音節が三度続いているというのは誰でも判る事です。
 首を捻りつつ、ラテン語の故事やことわざで、そんなのが無かったどうかを考えてみたところ、ある言葉が脳裏に引っ掛かりました。
 それは、かのユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)がルビコン河を渡った歴史的瞬間に洩らしたとされる言葉、「Veni! Vidi! Vici!」(来た! 見た! 勝った!)です。
 ラテン語は、基本的にローマ字読みで発音する(ローマの公用語ですからね)のですが、母音[V]は半濁音になって「ウァ」行、母音[C]は「カ」行なので(Kは特殊な言葉でしか使われません)、読みは「ウィニ・ウィディ・ウィキ」となります。

 これがどうして「ふぃーねす・ふぃーでぃす・ふぇーろっさ」に繋がるかというと、ドイツ語発音だと「フィーニー・フィーディー・フィーキー」になるからなのです。
 おそらく皆さんが疑問に思うのは、ここで何故ドイツ語発音なんてものが出てくるのかという点でしょうが、実は中世から近代に掛けてのラテン語の発音というのは大まかに二種に分かれるのです。

 一方がキリスト教カトリック派の総本山たるローマ教皇庁で、現在も使われているイタリア語発音。
 先頃にローマ教皇ヨハネ・パウロ2世が帰天された際、「コンクラーベ」という次期教皇選出会議の名前がニュースでも頻出してましたでしょう?
 conclaveと書くんですが、ラテン語のcum clave(鍵と共に)が語源で、正しいとされる発音ではコンクラーウェ。これのイタリア語発音が、コンクラーベ(コンクラーヴェ)です。

 そして、ラテン語を発音する際のもう一方の主流だったのが、ドイツ語読みなのです。
 これの主因となっているのは、ズバリ音楽です。“音楽の都”ウィーンがドイツ語圏だからなんですね。
 賛美歌やオペラなんかにはラテン語で書かれたものが多く、国柄にもよりますが、これらは基本的にドイツ語読みで発声されます。
 ちなみに日本にラテン語が流入したのは、世界大戦時に同盟を結んだドイツからですので、古い和製ラテン語辞書は全部ドイツ語読みでの表記になっているそうです。
 「聖戦と死神」では[Preuzehn]も登場していますし、ドイツ語発音は余計に不自然ではない事になりますし、アルヴァレスが最初に滅ぼした国がプロイツェンである事も、多分に関係が有るでしょう。

 さて、少々話が逸れてしまいましたが、これは「Veni! Vidi! Vici!」の変形ではないかと、私は考えました。
 そこでこれらの変化を調べてみると、[Venies][Vidies]まではアッサリと判明。
 ですが、[Vici]の部分をどう変化させようと、「ふぇろっさ」などという発音には一歩も近づかないのです……。
 正直、ここで一回諦めかけたんですが、暫くしてふと気になったのが「アルベルジュ」という言葉。
 ここから、連鎖的に思考が進みました。

 別項“「アルベルジュ」と「アーベルジュ」の違い”で述べておりますように、「アルベルジュ」はラテン文字(アルファベット)表記なら[Albelge]となります。
[Al]はアラビア語やスラブ諸語の冠詞であり、「ベルガ/Belga」は現在のベルギーがモチーフであると思われる。
 となりますと、地理的に西スラブ語派に含まれる可能性がある……。そういえば、スラブ語で「死神」は何というのだろうか?
 調べてみたところ、「ウェーレス/Veles」だった。
 ……これだ( ゚д゚)!

 ウェーレスという読みからも判るとおり([V]が「ウァ」行)、スラブ語はラテン語と同様にカトリック圏で使われていた言語です。
 つまりこうした固有名詞であれば、そのままラテン語にも組み込まれている場合があるんですね。
 そこでラテン語風に単数主格変化を加え、[Velesa]に。更にドイツ語発音にすると、これが「フェレッサ」となるのです。
 こうした経緯で導き出されたのが、

「クロノ・フィーネス・フィーディス・フェレッサ/Chrono Venies! Vidies! Velesa!」
(英語なら[the hour, comes! look! Death!]=「時間だぞ。来たぞ!見ろ!死神だ!」)

という答えだった訳なのです。

 無論、これが正答である保証は何処にもないのですが、この事によって「聖戦と死神」世界で使用されている言語の内、ガリアの『共通語』に該当するものが浮かび上がってきます。
 つまり、「ラテン語」を主軸とし、「ギリシア語」及び「スラブ語」が準国際語とする形態であり、これはローマ帝国時代に準拠するものです。
 この見解が、果たして正しいのかどうか。皆さんは、どう思われますか?
Copyrights (C) CAZ 【2005年07月12日更新】 | Chronicle 2nd | HOME
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。